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2010年06月15日

牛のいる生活 その6

牛のいる生活も 今日(14日)で最後です。
朝、白装束の方2名 泣きそうな顔をして健康チェックに来られました。
「もうすぐ、牛を積みに来ます」と。

仏壇にお茶、お水、必ず帰って来ますようにと手を合わせる。

間もなく、白装束の方1名到着。
開口一番「牛は大丈夫だから。先にトランキライザーを打つから、苦しんだり 暴れたりしないからね」と。
よく見れば、私たちのよーく知ってる人、先輩の牛飼いさん。以前「だれだって、自分で幕は引きたくないさ」と言った人でした。
「あれ~ いつからやってるんですか?」(口蹄疫を終息させる 強い思いがなければ こんなつらい仕事できないでしょう)
「え~、どのくらいかな・・・」(と考えている)
「考えんといかんぐらい前から?!」
「そうよ、もう仕事がないし・・」(今は牛は居ないけれど、やはり畜産関係の仕事ですからね)

「牛は、バカじゃないから、もう判っているよ」とも・・・(それは、私たちも判っています)

しばらく待っていると、消毒車とトラックの本隊が来る。
白い服やら、作業服やら5名ほど。

名前は判らなかったけれど、やはり牛飼いさんがいらっしゃいました。(明日が 自分の牛の予定日なのだとか)
その方が「あんたの所は頭数が少ないから大して辛くないじゃろ」と言われて悔しい思いをしたと言ってました。
その場に居た全員で「なんてひどい! 牛を手放す悔しさ、辛さは頭数とは関係ないのに」 「やっぱり、牛を飼ったもんじゃないと判らんのじゃろ」と口々に言いました。

トラックに みみこ ふゆこ 新太を乗せる。もちろん簡単には乗らない。みんな判っているのだから。

最期を見届けるのが畜主の務め。夫は、トラックの後を付いて行くつもりでしたが、その場に居た全員が「来なくていい」と言う。
花束を白い服の方に託す
牛のいる生活 その6

気丈な母が泣いている。

夜、19年分の血統書、受精カード 出生届けを部屋にならべてみる。
19年で8頭の母牛と出会った。みみことふゆこは姉妹。ふたりとも我が家で産まれて育った。
その母牛の はなこも我が家で産まれた。はなこの母牛 第5はつひめが我が家にやって来たのは平成7年。 おおきな おおきな牛だった。大きな口、のんびりした性格、ひとめで気に入った。
いづれ別れは来るけれど、こうやって命をつないできた。。。
他にも 大好きな牛がいたけれど、高齢出産だったり、あるいは 女の子が産まれなかったりして後継牛を残せなかった。

空っぽの牛小屋。無念。
夫はもう牛は飼いたくないと言っている・・・
私は、みみこと ふゆこと 新太のために またやりたいと思うけれど・・・

19年間の牛のいる生活が とても とても幸せだったと思う。


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Posted by てんとうむし at 02:42│Comments(22)うし
この記事へのコメント
長い1日でしたね。
先日の記事を読み、
お天気でありますように、と祈る反面、
ずっとずっと延期になりますように、と
願う自分がいました。

19年・・・てんとうむしさんと出会えた牛たちも
とても幸せだったんじゃないかと 私は思います。

必ず・・・必ず 帰ってきますように。
牛たちのご冥福を 心からお祈りします。
Posted by あんじぃ* at 2010年06月15日 06:51
おはようございます。

以前、
畑の事を書かれていたのを
(凄いなぁ。いつか教えて頂けたら…)
と読ませて頂いてました。
枯らしてしまう
専門の私(汗)





牛さんも
いらしたのですね。


しばらく、ゆっくりして欲しい所ですが、
そうもいかないのでしょうね。


微力ですが、私もできる事をやらせて頂いています。


どうぞ、心と体を大切に。

そして、いつか、畑の事を教えて下さいね。
Posted by 舞姫 at 2010年06月15日 09:50
小規模だからこそ、牛1頭1頭と人間のつながりは大きいものだと思います。癖、なき方、食べ方など、私も小さい頃はたった20頭くらいの牛から飼いはじめたので、毎日覚えました。
父の牛達も、半分以上が今天国にいます。まだまだ100頭以上が残ってますが・・・。毎日、父の畜舎からは、自衛隊の方がスコップで掃除する音が200m離れた私の家まで響いてきます。結構辛いですが、現実を直視するしかありません。父はまだ、懲りずに、半年後くらいに牛を飼い始めるとか。私はもう、こんな思いはしたくないけど、これは私の意見。実は、10年前の口蹄疫、父は保健所から「あなたの牛は陽性です」という間違えの通達を受け取りました。そのときの失望感と脱力感、今回の同じ病気でぶり返しました。2度あることは・・といいますが、それでも続けていこうという父の心は、なんといおうか、この仕事しかしらない父の意見なんでしょう。
Posted by minkeyminkey at 2010年06月15日 13:33
「だれだって、自分で幕は引きたくないさ」と言った先輩の牛飼いさんの話覚えています。

rueと新太くんがブログを通じで出合った頃でした。

あの頃、このような事が起こるなど、思いもしなかった。
これから、画面を通じで会えることを楽しみにしていたのでした。

惑星探査機「はやぶさ」を見ながら、新太くんたちのことを
思ったrueでした。

きっと、また、不思議なめぐり合わせで、てんとうむしさんの
そばに帰ってきた?と感じる日があるような気がします。

魂の平安をお祈りします。
Posted by ruerue at 2010年06月15日 17:28
去年、てんとうむしさん家にお伺いしようと、近くまで行った事を思い出しました。もし、伺っていたら、その「牛」さん達にも会っていただろうと。。。19年ですか・・・

また、「畑」の事でお願いしますね。
Posted by カズカズ at 2010年06月15日 18:40
初めまして。
私の旦那の家は、酪農家です。
大切な、お友達の家も、全て、埋め立てされました。
旦那の家も、お友達の家も、親戚の家も、もうすぐ、埋め立てられます。
毎日、毎日、涙です。
私は、持病を沢山、抱えていて、小さなお店をしています。
何か、私に役にたてないか、僅かな、売上金を、全て、
先日、被害募金へ、入れて来ました。
今、出来る事から、何か出来ないか。
近いうち、私は、親戚の、お宅へ、お花を持って行きます。
代々、何十年続いた、酪農家が無くなるのは、本当に、
辛いです。
私は、最後に、牛をなでて来ました。
今を、受け入れる事が出来ず、でも、旦那から、言われました。
泣くなって・・・
長々と、ごめんなさいね。
Posted by yukie at 2010年06月15日 19:47
あんじぃさん こんばんは
 
きのうは、 まずまずのお天気でしたね。
世の中 こんな信じられない事もおきるんだ・・・
兵隊として満州に渡り、その後シベリアで3年を過ごした 私の父が 今生きていたら 「理不尽」について語り合いたいと思った一日でした。

口蹄疫の終息に向けて、ブログでの呼びかけありがとうございます。 タオルの仕分けに ボランテァの方々の協力があった事も 今わかりました。支えてくださるたくさんの方に感謝です!
リンクしていただいたおかげで、私も世界が広がりました。
ありがとうございます。
 
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月15日 21:52
命の尊さは人間も動物も同じです。
心ない人もまま居ますが、ここには温かい心を持った皆さんが居ます。
宮崎県のとても大事なそれぞれの宝を失った方々と、募金活動やブログを通じて遠く見ず知らずのそれぞれの心が口蹄疫という問題によってつながりました。
与えられた心の痛みや苦しみ悲しみは、到底拭えるものではないと思います。
ただ、痛みの側面を違う角度からみれば、この問題に直面したからこそ、心のつながりが深くあるように思います。
今、宮崎の皆さんの心の絆は、きっと深く強いものだと思います。
失ったたくさんの命たちのためにも、私も、いつまでも人との関わりを大切にしたいと思います。
震災後の神戸の復興のように、宮崎が、そして皆さんが活力を取り戻すことを祈っています。
Posted by miho at 2010年06月15日 22:29
舞姫さん こんばんは

遠い福岡の地から 応援ありがとうございます。
宮崎の畜産と商業が 一日も早く 元気になるために 
前に進むしかありませんね。
今は「泣きスイッチ」が入らぬよう パソコンの前で、たくさんの頑張っている方のコメントや ブログに救われています。
野菜の話が 早くできるといいですね。
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月15日 22:58
minkeyさん こんばんは

お父様の 牛に対する思いに ただもう圧倒されました。
なんて 強い心をお持ちなんでしょう。
そんなお父様の傍で生活できるminkeyさんも きっと、この困難な状況を 同じように切りぬける力を持っていらっしゃると思います。
私も 今より少しでも気持ちを強くもって、「再建」を目指したいです。そうすれば我が家の牛たちに再会できるかもしれませんね。 元気をありがとうございます。
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月15日 23:50
rueさん こんにちは

本当に、ほんの2ヶ月前までは、牛のいる生活は 当たり前と思っていました。
今すぐ 黄泉の国から 連れ戻したい心境ですが・・・いや・・・
自分の中の魂の平安。。。 ですね
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月16日 13:31
カズさん こんにちは

さっき 町長さんが挨拶(お見舞い)に来られました。
私たちの町では 今回被災したほとんどの農家が、再び牛、豚を飼う意思があるとのことです。
児湯、西都が元気になったら、ぜひ我が家にも、仕事の途中に寄り道を・・・
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月16日 13:51
yukie さん はじめまして

私が初めて牛と出会ったのは20代の頃、乳牛でした。
深い藍色の目を見て ただもう「可愛い~」
ホルスと6年ほど付き合いましたが、万年乳拭き係で 一人前になれませんでした。
その間「牛は経済動物なんだから・・・」と何度も聞かされつつ親牛、子牛の最期に付き合いました。
酪農家は、牛と肌を合わせて仕事をしますね。。。
あばれる牛には、わざと身体を寄せた方が蹴られずに済むこともあるし(いや、顔面直撃もありましたが)
だから、酪農家の方の辛さはどれ程かと。。。

できる事なら、みんなで再建・・・そして、明るい町が再び戻ってくるようにと願っています。

私たち夫婦はテレビのお笑い番組を見て 笑うようにしています。(笑ってる気分じゃなくても)
yukieさんも お家の方や、お店のお客さんといっぱい笑って、お身体を大事になさってお過ごし下さい。
いつか、お会いできたら、一緒に笑いましょう!
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月16日 14:39
mihoさん こんにちは

いつもありがとうございます。
神戸の震災の時、テレビのアナウンサーが、亡くなった方たちの名前を淡々と読み上げている途中で 突然「この方たちには この方たちの人生が・・・」と言って泣き出したことが忘れられません。

天災にせよ人災(?)にせよ、人と動物の人生がこんなに簡単に狂うのかと、いまだ気持ちの整理がつきませんが・・・
今度の事で、多くのことに気付き、教えてもらいました。
人は温かいと気付かされたのが一番です。(このトシで遅かったとは思いますが)
自分の魂が落ち着いたら、また牛を飼い、失った3頭とまた出会いたいと思っています。
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月16日 15:08
今まで、ずっとコメントが出来ずにいました。
ごめんなさい。。
何と言葉を掛けていいのか・・・
その事の重さに、軽くコメントができませんでした。
ごめんなさい。。
今回の日記を読ませてもらって 涙が出てきました。
だけど、正直、心のどこかで他人事にしてしまっている
自分がいる様で恥ずかしいです。
だけど、今、自分に出来る事を・・・・という気持ちで
います。
がんばって下さい。
私は、「農」を応援する身として何か力になれたら
と思っております。何かあったら、おっしゃって下さい!!
Posted by ふなやん at 2010年06月16日 21:46
ふなやんさん こんばんは

どうも、ご心配をおかけしました。
私たちも 今、自分にできる事を ボツボツやっています。
それが、前に進むことですよね。。。
家族のようでもあり、土作りの大事なパートナーでもある牛を失って、かなりの痛手ですが、無肥料栽培や、植物だけの堆肥作りの勉強をする機会を得たと思って、取り組みます。
土作りのヒント等 また教えてください。
早く、この病気が終息して、自由にそちらまで遊びに行ける日が来るように・・・
やはり、気を抜かないで消毒ですね。
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月16日 23:58
おはようございます。コメントできなくて訪問だけでゴメンナサイ 又畜産をやりたいの気持ちにホッと胸をなでおろしました。生き物を養う事は、大変の一言につきると思うのですが・・・
私も野菜作り始めて 15年になると思います。てんとう虫さん
ブログ拝見して 先輩いらした・・・と思ったものです。

平成5年に台風で故郷をなくして、負けるものかの一心で来たと思います。無茶な話ですよね。自然を相手に戦うのですから・・・
でもその負けん気があったから今があると思っています。
どうぞ あの時 乗り越えて良かったねと 語りあえる日が

来る事を祈って・・・お体ご自愛の程に・・・終息を祈りつつ・・
Posted by サトウ工務店サトウ工務店 at 2010年06月17日 10:32
てんとうむしサマ
ブログ上では はじめまして、です。

本日、お会いした時 何とお声かけして
よいのかわからず変な感じですいませんでした。

ぜひぜひ、お母様のためにも頑張ってくださいね。
絶対、またあの子達が帰ってきますよ。

くれぐれもお身体 気をつけてください。
Posted by track at 2010年06月17日 22:27
サトウ工務店様 こんばんは

別れた3頭に 突然会いたくなる衝動を、畑に出て いくらか紛らしています。こんな時、畑ってありがたい、野菜ってありがたい・・・と思います。
サトウ工務店さんも もう15年も野菜作りをされてるんですね! 失敗したと思っていた野菜が 草むらで実を付けていたりすると、感激ですよね。
今回のことで、たくさんの方にパワーをもらいました・・・いつか笑うために・・・ありがとうございます
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月17日 23:45
track様

今日は ありがとうございます。ご心配をおかけしました。
髪とともに、気持ちもちょっぴり軽く・・・なりました。

ほんと、母の為には まず、私たちが元気になって、牛を飼わなければ!そうしなければ、3頭に出会えませんね。
これは、かなり大規模な親孝行ですね。

その為には、やっぱり消毒。 そして、感染がストップするように祈ります。
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月18日 00:17
以前から読ませていただいておりましたが初めてコメントさせていただきます。
紹介されていた絵本など、読んでみようと思っています。

19年も一緒にいた家族の牛さんたちとのお別れ、想像し泣くことしかできませんが、きっとてんとうむしさんご家族と一緒にいられて幸せだったと思います。
今もきっと広い場所でのんびりしているんじゃないかな、と。
当事者でない私も、いろいろなことを教えられ気づかされました。

そして、これから住んでる高鍋で友人達と農業をしようと話しています。
てんとうむしさんのように無農薬で大地が育ててくれるものを
自分の手で作り食べてみたいです。
また覗かせてくださいね。
Posted by ショコラ at 2010年06月18日 12:57
ショコラさん はじめまして

口蹄疫発生以来、私のブログの内容も 随分暗いものになり、ブログを通じて知り合ったたくさんの方にまで、つらい思いをさせてしまいました。 でも、この気持ちを共有していただいたからこそ、私たちは元気をもらえたと思います。ほんとうにありがとうございます!

我が家では高齢の母が、すっかり落ち込んで、ぼんやり過ごすようになり、これは大変! と慌てています。
なので、私も夫も 悲しんでいられなくなりました。
母を元気にするために、バリバリ冗談を言い、何事もなかったかのようにご飯を食べています。
以外にも、元気なフリをすると 元気になった気になります。

無念さは、そのまま大切に心の中にしまって・・・これからは、明るく元気な話題もお伝えできればと思います

畑では、また今年もアナグマとの戦いが始まりました。。。
ことしは、てんとうむし夫婦に軍配があがりますように!
また、報告いたしますので、お楽しみに。
Posted by てんとうむしてんとうむし at 2010年06月19日 01:42
 
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